日高山脈縦走路を望む(中央は1251P)
トンネル駐車場から豊似川に下りて、1km下ってトヨニからの沢が合流する。トヨニへの沢を650m入って尾根に取り付く。
真っ暗な中、LEDヘッドライトは雪に反射して夏より明るい。スキーのトレースを辿るも、躓いて転倒したり、スノーブリッジを踏み抜いたり、GPSで現在地を確認したりして、特に沢の登りになって脚が重い。
【帰りに撮影】沢からトヨニ東峰へ繋がる尾根を目指す。
傾斜が強くジグを切る。
尾根に乗っても、顎が出るほど傾斜が強い。東峰1460mまで標高差900m強ある。
日高山脈主縦走路が見えて来たが、随分遠くかつ高い。
休憩で温度計を見ると-14℃。
風が強く、フリースを脱いだだけで登れる(暑くない)
朝陽と青空に、ようやくモチベーションが上がった!
朝陽に輝く日高山脈主縦走路。神々しいまでに美しい。
一瞬正攻法で登れば良かったかなとの思いが浮かぶ。
しかし、この風ではあの岩場とナイフリッジは通れない。
長い尾根が続く。一つ一つコブを乗り越えて行く。
風が強く、目出し帽とフリースを着込んだ。
雪雲から青空が出たり隠れたり。
傾斜はきつく疲れが出始めた。
そこはかとなくスノーシューの痕跡が見られた。
中央に国道236号の橋が緑色に(クリックすると拡大されます)
登って来た東尾根からは深い谷は見えない。
十勝平野の青空が嬉しいけど、この傾斜はスノーシューではきつすぎる。
脚力がまだ回復していないからか・・・
新たに買ったアイゼンが新しいアルパインクルーザー3000にピッタリフィットした。
踵も爪先も異次元の感覚だ。如何に合わないアイゼンを履いていたのか理解出来た。
お気に入りのスノーシューは背負う。
危機管理のためもあるけど、荷物が重くなり肩に食い込む。
リュックは42Lでツエルトやダウンなど満載。
コブを乗り越えて振り向くと、十勝平野は天気が良い。
しかし、日高山脈は次第に雪雲に覆われていく。
陽射しで光っているピークが東峰である。
ツボ足アイゼンがハマって体力を消耗した。
東峰と白い日高山脈主縦走路。
着込んだ体に風雪がぶち当たり、手がしびれる。
予備の手袋は厳冬期用だけど、それを履く程では無かった。
左の尾根の足跡が私が歩いた道。
中央の双耳峰が野塚岳で右端から日高山脈主縦走路が連なり、見える範囲は踏破済み。
急速に天候は悪化した。
ついに東峰に立った\(^O^)/
でも風雪が強く視界が利かなくなっている。
吊り尾根(両側が切り立った谷地形)を歩くのは危険だ。
写真では分かりにくいので歩くルートに赤いラインを入れた。
振り返ってもどんどん天気は悪化している。
撤退か・・・
いや、行くぞ! 吊り尾根は怖くて途中で写真が撮れず。
アイゼンはしっかりと効いていた。
登り切ると爆風に長くは立っていられないトヨニ岳山頂1493m。
降る雪と巻き上げられた雪で視界がないが、見覚えのある風紋がある(赤い○)。
風が強くて、近づけない。
2015年2月7日、トヨニ岳山頂から変わった雪のオブジェを撮影したが、それに違いない。
この写真では左端が北峰1529mである。
こんな良い天気は40年におよぶ登山人生でも数回しか無い。詳しくは「ドクトルひだかの山歩き」に記載。
爆風を避けて山頂を少し下り食事。
力が出ないほどお腹が空いているが、視界が消えて行く・・・まずい!
それでも熱いヌードルをかき込んだ。
時に耐風姿勢を取りながら東峰へ登り返す。
風で煽られて、どちらに転倒しても命は無い。
最低限の視界が保てていて助かった。
東峰からの尾根の下りは、しばらく写真の被写体がなかった(~_~;)
スノーシューに履き替えた時、お茶が凍って飲めなかった(ToT)
山専のお湯の残りでカフェをする余力も無かった(風雪に体力消耗)
尾根の下部で天気は改善したが、風は強く-10℃だった。
山頂は温度計に雪が付着して読めず。推定-20℃以下。体感温度は-30℃以下。
沢を下るけど、もう体力の限界を越えていた。
帽子とフリースを脱いだが、手袋は履いたまま。
沢を雪が覆う風景は大好きだ。
楽しむためと言うより、休むために撮影(笑)
この時期にしか見られない国道の裏を覗く。(夏はブッシュ)
1.6km100mの標高差を登り返して、トヨニ岳1493m登山を終えた。
4:42駐車場→10:17東峰→10:47山頂(昼食)11:05→13:19沢歩き→14:25駐車場
優駿ビレッジ「アエル」で暖まった。
10時間弱氷点下10℃以下の風雪に晒されて、低体温症の初期症状の「震え」が出た。
普段はカラスの行水なのに3分間もお湯に浸かって暑さに耐え、体を温めた。
過去にも風雪の中16時間歩き通したリビラ山では、車に乗る時汗をかいた服を脱いだだけで体がガタガタ震えた事がある。
希代の暑がりも「人間」なので、真夏のアンダーでは冷えてしまうのかな?
寒いと感じた事は無いけど、その服装で登山では無く「座っていろ」と言われたら寒さを感じると思う。
【GPSトラック図】
青線が実際に歩いた軌跡である。
2015年2月の歩行ルートを赤線で記入した。
風雪のトヨニ岳に登った。
天候は、前日に詳細に分析していて、強風も計算しこのルートを選んだ。
トヨニ初登と違うルートを歩く事で、違う風景を楽しむ事が出来た。
積雪期は天候によっても、雪の状態によっても踏破する時間が全く異なる。
装備を調えれば、最後は「安全に」歩き通す体力と精神力だ。
雪山の中を歩く事が出来るだけで楽しく嬉しい。
累積標高差1000m以上の厳冬期日帰り単独行登山は、そうそう出来る事では無い。
飽くなき挑戦で自分に勝った山行だった。
今、筋肉痛の余韻に浸っているけど(笑)